ぽんこつブログ

ただの備忘録とひとりごと

コインロッカー・ベイビーズ

やっと観て来ました。

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始まる前までは何回入るかな〜?とかキスシーンか〜なんて悠長なことを言っていたのですが、

舐めてましたごめんなさい。


正直リピーターできないくらいの衝撃でした。衝撃すぎてずっと泣いてた(笑)周り泣いてる人いなかったし、何ならみんないつもみたいにかわいいって言ったりシーンの分析したりしてて私は「は?」ってなりました。

何故私だけ泣いている??


冒頭の耳を塞ぎたくなるような赤ちゃんの泣き声からシーンは始まる。もうここでゾワゾワする。

暑い暑い梅雨のジトジトした空気の中、蒸し風呂のようなコインロッカーに押し込まれた赤子が、そんな情景見たことないのに、ブワァッと脳裏に浮かんだ。

強く芯のあるキクの歌声と、ゆらゆらと今にも消えそうで掴めないハシの歌声。舞台の最初から歪な世界に引きずり込まれる感覚。呼吸ができなくなるような感覚。


コインロッカー・ベイビーズの狂った世界を表現する第一のシーンがアネモネとタクシードライバーの掛け合い。芋洗坂さんがかなり狂気で私はエンタとかに出てる印象しかなかったので(笑)驚くどころじゃなかった。もうそれこそキチガイの変態オヤジそのものだった。

そんなアネモネの危機に現れたキク。その強さに惹かれるアネモネの心情が手に取るように分かる。アネモネを演じる昆夏美さんが今時な感じでとても良い。と思ったんだけど、よくよく考えたらコインロッカー・ベイビーズの原作って80年代なのよね。その時代に創られたものを「今時」と感じる。とても面白い。
何より、アネモネの強さが私は好きだ。昆さんのアネモネは等身大であり、かなり引き込まれる部分がある。二幕で歌う「殺してあげる」はキクを思って歌うのだが、表現力豊かで涙を流さずにはいられない。
余談だが、どうやら昆さんは表現力に定評があるらしく、以前出演されていたレ・ミゼラブルで歌っていた「オン・マイ・オウン」という曲が素敵なので是非検索して見て頂きたい。レミゼ出演は数年前だが、当時から突き抜けるような歌声と表現力は素晴らしいものだったようだ。

話を戻そう。

ハシとキク、里親のデパートでのシーンではゆらゆらと漂うハシと、ハシを守り抜こうとするキクの関係性が見える。ハシという人間はキクという存在を中心に構成されているのではないか。

そして母親の存在を探してキクから離れるハシ。デパートでの催眠術をきっかけに、ハシを必要としてくれる母親に会いたい気持ちが膨らんだように見えた。

そして東京へ。

誰も知らない土地でキクを必要としたD。キクはDに対して(ニヴァに対しても)セクシャリティを越えた感情があったのだと思う。ただハシを必要としてくれた人がDという男性だっただけなんじゃないかな。

私が思うに、ハシはとても依存的だ。
キクに対しても愛情が深すぎて依存的になり、キクと離れた場所で新たに自分を必要としてくれたDにも依存的となる。どこまでものめり込む。そんなハシの姿にキクはどんな感情を抱いたのだろう?私には分からない。

ハシという人間はキクという存在を中心に構成されているのでは、と話したが、キクを母親に会わせようと一生懸命になる姿が、そこに現れているような気がする。

母親に一目でも会いたいと願うハシ。
自分を捨てた母親になど会いたくないと思うキク。
どちらも純真無垢な思いなのだ。

そしてハシにとって特別な存在であるニヴァ。ニヴァもまたハシを必要とし、ハシもニヴァに女性を感じる。

それでもクライマックスに向けハシは狂気の世界へ引きずり落ちていく。

ハシがどんどん狂ってしまったのは、満たされない感情がどこかにあって、ハシはずっと独りだったからなのではないか。そして仄暗く果てのないどん底へ落ちていくハシ。そんなハシを掬い上げるのは、いつだってキクなのだ。

キクによって自分を取り戻すハシ。

ハシはキクにしか救えない。


それがコインロッカーから生き残った二人、コインロッカー・ベイビーズの運命なのだと感じた。




今までは役を演じている橋本良亮を観ている感覚だった。けれど今回は違った。幕が開いたその瞬間から、そこに橋本良亮はいなかった。ハシしか存在しなかった。橋本良亮の姿形をしたハシだった。けれど橋本良亮の表情ではない、声ではない、その初めて味わう感覚に恐怖を感じた。

ハシに橋本良亮が微塵も感じられなくて、はしもとくんが消えちゃうんじゃないかって思って、バカみたいだけどそれが本当に怖くて怖くて、見たくないって本気で思った。


そこには本当にハシしかいなかった。

だけどたった一つ。
「僕は誰かの役に立ちたかった。ただそれだけでいいんだ。」
この台詞だけは何故かハシと橋本良亮の二人が言っているような気がして涙が止まらなかった。


とんでもない舞台だった。